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藍染めソケットプロジェクト ④ いよいよ納品へ!

樹脂注型したモデルを自社に持ち帰ってソケットのトリミング等の最終仕上げを施したのち、いよいよ納品の運びとなりました。

数日前から楽しみにされていたというH様に実際に装着していただくと、実にカッコいい!!イメージ通りの仕上がりです。とても満足していただけました。

ソケットの吸着はOSUR社のUNITYシステムを採用。
絞染めの模様も狙った位置に収まりました。

ちなみに、通常はフォームカバーというスポンジ材を脚の形に削って被せることでパイプ等のパーツを覆って仕上げるのですが(これを外装といいます)、H様は外装にこだわりがなく、仕事でお客様に会う時や冠婚葬祭などのフォーマルな場面で脚の形になっていれば良いということで、いつもラポック社の「インスタントカバー」という着脱のできる外装仕上げにしております。H様のような「見せる」ソケットの場合、このような仕上げ方のほうがいいかもしれませんね。

LAPOC社のインスタントカバーを装着した状態。
ベルクロで簡単に着脱できるようにしています。

このような他社様とのコラボは今回が初めての試みでしたが、実際にやってみて多くの学びがありました。どちらかというと閉鎖的な業界なので、このような取り組みが活発に行えるような流れになっていけばとても面白そうだなと思いました。

最後になりましたが、当社の申し出を快く受けていただいた安田様をはじめ、営業日にもかかわらず暖かくお迎えいただいたうえ、工房で心置きなく作業させていただいたKYOTO gishi*designのスタッフの皆様に心からお礼申し上げます。ありがとうございました!

前回の記事はこちら▶藍染めソケットプロジェクト ③ 樹脂注型 – 義肢・装具の製作 冨金原義肢 (fukinbara-gishi.com)

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藍染めソケットプロジェクト ③ 樹脂注型

いよいよ樹脂注型です。

膝の下にVの字のよう模様が位置するように設定し、あらかじめ積層材を被せておいたモデルの上に藍染め生地を被せていきます。この段階の生地(乾いた状態)の色味をよく覚えておいて下さいね。

H様が選んだ生地を縫い合わせて型に被せた状態。
十分に美しいのですが、ややマットな色味です。

最後にPVAバッグという透明のフィルムを被せ、真空ポンプで下から吸引をかけながら樹脂を流していきます。

余談になりますが、このPVAバッグという材料は、表側の表面に光沢感があるのに対して、被せる際に滑りやすいように内側の表面がマットな仕上がりになっており、表裏をひっくり返すとソケットがクリアな色味になります。今回藍色の色をクリアに出したかったのでPVAバッグをひっくり返して作業していたところ、安田さんはご存知なかったようで「いいこと知りました。今度それでやってみます!」と喜んでおられました。

私も、KYOTO gishi*design様の工房の真空ポンプが自社の物と違ったことで戸惑ったりしましたし、このような他社様とのコラボではお互い新しい発見があるので面白いですね。

PVAバッグを被せ、無着色の樹脂を流し込むと、
みるみるうちに鮮やかな色味に変化していくのが分かります。

さて、実際に樹脂が流していくと、みるみるうちに生地に染み込んでいって色に深みが出てくる様子が分かります。これが前回のブログで述べた、生地の仕上げ工程で水洗いをしている時の魅力的な色味になるということです。

作業を終えて工房の前でH様と記念写真。仕上がりが楽しみです!

とても嬉しそうな表情のH様(右)

前回の記事はこちら▶藍染めソケットプロジェクト ② 生地選び – 義肢・装具の製作 冨金原義肢 (fukinbara-gishi.com)

次回の記事はこちら▶藍染めソケットプロジェクト ④ いよいよ納品へ! – 義肢・装具の製作 冨金原義肢 (fukinbara-gishi.com)

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藍染めソケットプロジェクト ② 生地選び

仮合わせを終えて仕上げの樹脂注型を行う準備が整い、いざKYOTO gishi*design様の工房へ!

当初は藍色一色の生地を使わせていただく予定でしたが、藍色の濃さの違いで数パターン、さらには絞り染めの技法で色々な柄を施した生地もご用意していただけるということで、H様が「樹脂注型の作業を見てみたい」とおっしゃったこともあり、工房までお越しいただいて一緒に生地選びもしていただくことになりました。

安田さんの説明を聞きながら生地を選ぶH様

藍染めした生地を義足ソケットに使用するメリットについて、とても興味深いストーリーがあるのでここでご紹介したいと思います。

藍染めを施した生地は、当然ながら乾いた状態で製品として出荷されるのですが、作家さんにとって最も生地が魅力的な色を見せてくれるのが、最終工程で生地を水洗いする時に水が浸み込んで深い藍色になり、水面に映る光も反射してキラキラと輝く瞬間なのだそう。安田さんが藍染めの師匠にソケットの試作品を見てもらった際、透明の樹脂が浸み込んだ生地が、その一番魅力的な藍の発色が蘇ったかのようだと言っていただいたそうです。私はこの話を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立つほど感動したのを覚えています。

さて、話を元に戻しましょう。 私も間に入りつつ、H様が最終的に選ばれたのは絞り染めが施された生地でした。なかなかカッコいい!

前回の記事はこちら▶藍染めソケットプロジェクト ➀ 序章 – 義肢・装具の製作 冨金原義肢 (fukinbara-gishi.com)

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藍染めソケットプロジェクト ➀ 序章

義足のソケット(断端を収納する部分)は、通常残存する部位との違和感が生じないよう肌色の着色料を樹脂に混ぜて注型して仕上げるのが一般的です。弊社でも、ユーザー様から特段のご要望がない限り肌色が第一選択となります。

しかし、義足も“個性”のひとつという考え方からだと思われますが、欧米ではまるでファッションを楽しむかのように装着されているユーザー様もおられます。

私自身、そのような義足を製作する機会がないかと思っていた矢先、10年ほど前から若い下腿義足ユーザー様(以下H様)を担当することになりました。好きな柄でソケットを作ることができるとお伝えするととても乗り気になっていただき、ご本人持ち込みのTシャツの生地などで何度か製作してまいりました。毎回どんな生地で作ろうかと相談するのも楽しいのですが、近年はだんだんマンネリ化してきたのも事実です(笑)。

過去に手掛けたH様のソケット。
タイダイ染めのTシャツを使用。

そんな矢先、ご自身で藍染めした生地で義足ソケットを作るKYOTO gishi*designの安田伸裕さんの活動を知ることとなります。

KYOTO gishi*designの安田伸裕さんは、機能性を重視するあまり、得てしてデザイン性が置き去りにされがちな義肢装具を何とかしたいとの思いから、義肢装具士としての通常業務の傍ら、通信制芸大のテキスタイルコースの門を叩いて染色技術を学びました。

そこで出会った藍染めの技法に魅了され、自ら染色した生地を義足ソケットの材料に転用するなどの活動をされています。

※「ファッション性の高い、ユーザー目線の義肢装具を当たり前に普及させたい!」という安田さんの熱意や活動内容はnoteでご覧いただけます。是非ご一読ください。 (https://note.com/nice_holly825/

フォローしていたインスタグラムで深い藍色のソケットを目にした瞬間、「カッコいい!この生地を使ってみたい!」と思いました。そして、前回のブログで触れた下腿義足ユーザーのH様からソケット交換のご依頼があったタイミングで安田さんに藍染めの生地を提供していただけないか打診したところ、快諾していただくことができました。そして、安田さんからのご提案により、KYOTO gishi*design様の工房で生地選びとソケットの樹脂注型作業をさせていただく運びとなりました。

安田さんが製作された藍染めの大腿義足ソケット。
(提供:KYOTO gishi*design)

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KYOTO gishi*design様のinstagram▶ https://www.instagram.com/kyoto_gishi_design/

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